YAMABIN | 山便 003 | 景色の途中。
YAMABIN|山便
人、植物、モノ、場所。
山を編集する日々の記録。
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YAMABIN 003
景色の途中。
2026.09.30
9月26日から「秋の山 2026」が始まりました。
芽の巣山では春夏秋冬、季節の変わり目に「○○の山」と題して、店内の植物を少し入れ替えます。
期間中、対象となる植物は20%OFF。
いわゆるセールです。
ただ、「残ってしまった植物を安くする」という感覚とは、少し違います。
植物も、店も、ずっと同じ景色ではない。
季節が変われば、新しい植物を迎えたいし、店の景色もまた変えていきたい。
今回は、そんな「秋の山」の裏側にある、芽の巣山の植物の話を少し。
01|本当は、その前に。
ぶっちゃけてしまえば、「秋の山」に並ぶ前に誰かのところへ旅立ってほしかった植物たちです。
これは本当です。
でも、だからといって悪い植物というわけではありません。
むしろ、いいものもたくさんあると思っています。
芽の巣山の植え込みは、植物だけの値段ではありません。
作家さんが一つひとつひとつ作った鉢。
芽の巣山の視点で選んだ植物。
育成を考えた用土。
そこへ山石、山砂などのマテリアルを合わせ、一鉢ずつ植え込んでいます。
自分自身、芽の巣山の植物を特別高いとは思っていません。
中には今回20%OFFになることで、植え込まれている作家鉢そのものの価格を考えると、「これ、大丈夫かな」と思うものまであります(笑)。
それでも季節が変われば、店の景色も変えたい。
新しい植物も入れたい。
だから春、夏、秋、冬。
季節の変わり目を、一つの区切りにしています。
「前から気になっていたけど、まだ手を出していなかった」
そんな植物があるなら、この機会にもう一度見てもらえたらと思っています。
02|店から、山へ戻る。
そして「秋の山」で出なかったからといって、その植物が終わるわけではありません。
芽の巣山には、店とは別に植物を育成している温室があります。
季節の山が終わると、長く店にいた植物の一部は、もう一度そこへ戻します。
養生する。
もう少し大きくする。
仕立て直す。
株分けする。
増やしてみる。
そしてまた、いつか店へ戻ってくるものもあります。
植物の入り口もさまざまです。
ナーセリーから分けてもらったもの。
輸入された株を仕入れ、発根させたもの。
芽の巣山で長く育成してきたもの。
株分けして増やしたもの。
店頭だけを見ていると分かりづらいのですが、植物は高円寺と、山のハウスを行ったり来たりしています。
芽の巣山はビニールハウスの中にあるショップではないので、店頭の鮮度も大切にしたいと思っています。
今、見てもらいたい植物を店へ出す。
時間が経ったものは、一度温室へ戻す。
また育てる。
そして、また出す。
植物そのものと同じように、店の景色も循環しています。
03|売りたくなくなる。
面白いことに、長く管理していると逆のことも起こります。
売りたくなくなってしまう。
店頭の植物の中に、ときどき赤い札がついているものがあります。
「なんでこれだけ赤札なんですか?」
と聞かれることがあります。
あれは僕の中では、ちょっとした「止め札」みたいなもの。
高級だから赤いわけではありません。
長く管理しているうちに姿が良くなったもの。
もう一度温室へ戻して育てたいもの。
繁殖させてみたくなったもの。
そんな植物に付いていることがあります。
もちろん、そんな株ばかりではありません。
100鉢管理していて、一つか二つ。
でも植物を長く育てていると、ときどきそういうものが出てきます。
商品だったはずなのに、時間が経つことでこちらの気持ちまで変わってしまう。
植物の面白いところだと思います。
04|すべてが、成長途中。
10年ほど前。
コーデックスという言葉がまだ今ほど一般的ではなかった頃は、僕自身も「見たことのない植物」を探すことに夢中になっていました。
その後はアガベが大きなブームになったり、植物にもいろいろな流行がありました。
もちろん今でも珍しい植物は好きです。
でも、一周して今思うのは、
すべてが成長途中なんだ
ということ。
珍しいから素晴らしい。
人気だからいい。
普及種だから面白くない。
そう簡単には分けられません。
多肉植物だけを見ても、自分がまだ出会ったことのないものが山ほどあります。
一生かかっても全部を見ることなんてできないと思います。
そんな中で、自分が植物に順位をつけるような感覚には、あまりなれません。
それよりも、
この植物をあと5年育てたらどうなるんだろう。
大きくしたら格好いいだろうな。
これはバラさず群生させた方が面白そうだな。
この木は芽をたくさん吹くところが魅力だな。
そんな、今の姿のもう少し向こう側を想像して植物を選んでいます。
だから芽の巣山にあるのは、完成された景色というより、
景色の途中。
なのかもしれません。
05|見た目からでいい。
では、植物をどう選べばいいのか。
僕は、なんだっていいと思っています。
葉っぱが好き。
花が好き。
幹が好き。
仕立てが好き。
入っている鉢が好き。
この植物とこの鉢の組み合わせが好き。
それで十分だと思います。
育てやすいかどうかから入らなくてもいい。
まず、
「これを育ててみたい」
という見た目からでいい。
そこから、その植物のことを少しずつ知っていけばいいと思っています。
昨日、水をあげた。
今日見たら、何か変わった。
一週間水を切ってみた。
葉の感じが変わった。
あまり日に当たっていなかった植物を、少し明るい場所へ動かしたら姿が変わった。
反対に、季節が進んで日照が少なくなったら、また違う変化があった。
毎日見ていると、少しずつその植物のことが分かってきます。
もちろん店で聞いてもらえれば、自分が知っていることは伝えます。
でも逆に、
「うちではこうなりました」
「この肥料が良かったです」
「この用土で調子が良かったです」
「この環境だと、こんな姿になりました」
そんなことがあったら、ぜひ僕にも教えてほしい。
育てる場所も違えば、環境も違います。
植物について、売る側だけがすべての答えを持っているとは思っていません。
植物を一つ手に取ったところから、その人なりにその植物を知っていく。
その時間まで含めて、楽しんでもらえたらと思っています。
06|値段も、途中。
そして、これも少しぶっちゃけた話を。
今回「秋の山」で20%OFFになったからといって、その植物そのものが変わったわけではありません。
期間が終われば、価格は通常に戻します。
そして温室へ戻した植物は、その後も育っていきます。
たとえば今、5,500円で並んでいる植物。
温室へ戻して育成し、少し大きくなったり、姿が良くなったりして、次に店へ出てくるときには6,600円になっている。
そんなことも普通にあります。
植物は成長するものなので、姿や状態が変われば、価格もそれに合わせて変わります。
もちろん、逆もあります。
温室で管理している間に株が増えたり、繁殖できたりすれば、以前より手に取りやすい価格で出せることもある。
反対に、増えずに一株のまま大きくなれば、価格が上がることもあります。
少しいやらしい話に聞こえるかもしれませんが、これが植物を扱っていて実際に起きていることです。
値段が先にあるというより、
植物が育ち、姿が変わり、その時々の状態に合わせて値段も動いていく。
だから今回買ってもいい。
見送ってもいい。
「もう少し大きくなった姿を見て、それでも欲しかったら買おう」
それも全然ありだと思っています。
ただ、その時に同じ価格かどうかは分かりません。
逆に、安くなっているかもしれない。
店へ来たときに、
「あ、この植物、前にもいたな」
と思いながら見る。
WEB STOREを見て、
「これ前にも出てたな。ちょっと大きくなったな」
と気づく。
そんな見方で芽の巣山を楽しんでもらうのも、面白いと思っています。
植物は商品である前に、ずっと育っているものです。
だから価格も、店にいる場所も、姿も変わっていく。
その時間ごと見てもらえたら嬉しいです
山のあとがき
「秋の山」と言いながら、結局セールの話をほとんどしませんでした。
でも、それでいいような気がしています。
今回並んでいる植物も、少し前まで芽の巣山で普通に並んでいたものです。
20%OFFになったからといって、その植物そのものが変わったわけではありません。
まだ小さいものもある。
これから姿が変わるものもある。
何年か育てて初めて、
「こうなるのか」
と分かるものもある。
植物は、ずっと景色の途中です。
今回の秋の山で連れて帰るのもいい。
一度見送って、その植物がこの先どうなっていくのかを見るのもいい。
お店やWEB STOREで何度か同じ植物に出会いながら、その変化を見てもらうのもいい。
そして今回、誰かのところへ行った植物が何年か経って、
「あの時の植物、こんなになりましたよ」
と見せてもらえたら。
僕もまた、知らなかったその植物の姿を知ることができます。
売ったら終わりではなく、
育てながら知っていく。
お互いに知ったことを、また共有する。
そんなふうに植物と付き合っていけたら、一番面白いのかもしれません。
秋の山 2026
MENOSYAMA SHOP
9/26(土)– 10/18(日)
月曜日定休
※期間中、臨時休業となる場合があります。
MENOSYAMA WEB STORE
9/27(日)[SUNDAY 8PM]– 10/18(日)
対象商品
陶器鉢植え込み済み植物
一部ワケアリポット
(スペシャルプライス/店頭販売のみ)
対象外商品
新入荷植物
作家鉢
芽の巣山プロダクト各種
※その他、スタッフまでお気軽にお問い合わせください。
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PROFILE
石井和昭|Kazuaki Ishii
芽の巣山 店主。
美容師として人の手から造形される髪型に長く向き合ったのち、植物の世界へ。
多肉植物、サボテン、珍奇植物をはじめ、鉢、陶芸、工芸、土、石など、人のつくるものと自然のつくるもの、その交じりあった景色に惹かれる。
著書に『THE POT』。
東京・高円寺「芽の巣山」を拠点に、植物のセレクトや植え込み、作家との別注制作、「山の道具」の企画・制作を行う。
植物を売ることだけではなく、その植物が置かれる景色、その背景にある人やモノまで含めて伝えること。
「山を、編集する。」
をテーマに、植物と人の間にある景色をつくっている。
MENOSYAMA
Tokyo / Koenji
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MENOSYAMA WEB STORE
https://giftbymenos.com/