YAMABIN|山便 002
YAMABIN|山便
人、植物、モノ、場所。
山を編集する日々の記録。
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YAMABIN 002
アンドリューさんの山へ。
2026.09
10月10日、11日の二日間、芽の巣山では3回目となるアンドリュー・ゲムリッチさんの単独展示会を開催します。
展示を前に、humanityのキュレーションをするクラさんと一緒に、アンドリューさんの工房を訪ねてきました。
益子の道の駅から、さらに車を走らせる。
少しずつ家がなくなり、気がつけば周りは山。
時期的には少し早かったけれど、道の脇には雑キノコなんかも顔を出していました。
アンドリューさんの山へ。
今回のYAMABINは、そんな一日の記録です。
01|山の中の工房
アンドリューさんの工房を訪ねるのは、今回で二度目。
本当に山の中にあって、周りには近隣の家もほとんどありません。
家自体も、アンドリューさんがいろいろな人たちと協力しながら作ったもの。
日本の住宅ではあまり見ないような高い天井の工房。
たたきの土間。
ずっと向こうまで続くような長い縁側。
たくさんの窓。
とても素敵な場所です。
でも、単に「素敵な家」というだけじゃない。
実際にその場所へ行ってみると、
なるほど、こういう環境からアンドリューさんの作品が生まれているんだ。
と、妙に納得するものがあります。
山の中で暮らし、そのままそこで土に触れ、絵を描き、ものを作る。
アンドリューさん自身も、いつもと変わらず穏やか。
3回目だから何かが大きく変わったというより、今回もいつものアンドリューさんでした。
それが逆に珍しいような気もします。
焦っていない。
急かされてもいない。
何かを必要以上に主張するわけでもない。
とても自然体。
あの山の環境とアンドリューさん自身が、どこかそのまま繋がっているように感じました。
02|描く。
「少し絵付けしているところを撮らせてください」
そうお願いすると、特に打ち合わせをするでもなく、アンドリューさんはその場で化け猫を描き始めました。
尻尾が二つ分かれた化け猫。
下絵をきっちり用意するわけでもなく、話をしながらスラスラスラっと。
かなりアドリブに近い感覚です。
制作が少し迫っていることもあって、
「間に合わせないとね」
というような苦笑いもありつつ。
その表情もどこかチャーミングでした。
作品から受ける強さとは裏腹に、本人は本当に穏やかです。
机の上には絵付けの道具。
新聞紙には、何気なく描かれたスカルや顔。
鉢に描くから描く。
作品にするために描く。
というよりも、
描くこと自体が、普段からそこにある。
そんなふうにも見えました。
03|競争していない作品
僕がアンドリューさんの作品に惹かれる理由を考えてみると、
「競争していない作品」
だからなのかもしれません。
植木鉢に、ここまで自由に絵付けする人は、今ほとんどいないと思います。
だからといって、奇をてらっている感じもしない。
土物らしいラフな質感。
自然な釉薬の色。
そこへ、
スカル。
ルチャ・リブレ。
妖怪。
一見すると相反するようなものが、ごく自然に同居しています。
現在の作品には、humanityとのやり取りもあります。
「スカルをやってみよう」
「プロレスのモチーフはどうだろう」
そんなhumanityからのディレクションを、アンドリューさんが自分なりに受け取り、手を動かす。
その信頼関係の中から、
“CALAVERA”
“LUCHA LIBRE”
“YOUKAI-SUNDANCE”
といった作品が生まれてきました。
そして今回も、また新しいモチーフが。
それは展示当日のお楽しみにしておきます。
でも、結局このミックスは、アンドリューさんだから成立するんだと思います。
アメリカで生まれ、日本へ渡り、益子で陶芸を学び、今は山の中で暮らす。
いろいろな文化を通ってきた本人が、無理なく混ざった結果。
だから独自性は強いのに、どこかナチュラルです。
04|鉢を先に買う。
これまで芽の巣山でアンドリューさんの作品を紹介していて、面白いことがあります。
もちろん、誰にでも同じように刺さる作品ではありません。
でも、刺さる人への刺さり方がすごく深い。
「全部欲しいです」
という人がいる。
普通、植木鉢を探すときは、
この植物に合うサイズはどれだろう。
この植物なら、この形かな。
そんなふうに植物から鉢を探すことが多いと思います。
でもアンドリューさんの場合は、逆になることがある。
まず、この作品が欲しい。
スカルの表情が好き。
この絵が好き。
この鉢そのものが好き。
だから一旦、鉢を買う。
植物はそのあと考える。
少し、キャンバスに描かれた絵を買う感覚に近いのかもしれません。
植木鉢として使えるけれど、その前に一つの作品として欲しくなる。
そこもアンドリューさんの鉢の面白さだと思っています。
05|ひとつずつ、見る。
今回で芽の巣山での展示は3回目になります。
だからといって、特別難しく考えて見てもらう必要はありません。
ただ、できれば少しだけ近づいて、一つひとつを見てほしい。
同じスカルでも、表情は違う。
同じモチーフでも、筆の動きが違う。
鉢そのものにも、サイズの違い、手跡、歪み、土の表情があります。
植木鉢を一つのキャンバスだとしたら、その一つひとつを少し解像度を上げて見てみる。
そうすると、それぞれ全然違う作品だということが分かると思います。
その上で最後は、
「これ、いいな」
でいい。
植物との組み合わせは、そのあと考えてもいいと思います。
山のあとがき
今回、工房へ行って改めて強く残ったのは、作品だけではなく、アンドリューさんの暮らしでした。
山の中に家があり、工房があり、そこで暮らしながらものを作る。
それが、もう実際にできている。
素直に、いいなと思いました。
僕自身もいつか山に温室や工房をつくって、今の高円寺とはまた違う、もっとリアルな「山の芽の巣山」のような場所をつくりたいと思っています。
だからアンドリューさんの暮らしを見ていると、作品とはまた別のところでも惹かれるものがあります。
今回見せてもらった鉢の多くは、まだ完成品ではありませんでした。
素焼きの鉢。
これから絵付けされるもの。
描かれたばかりのもの。
ここから窯へ入り、焼き上がる。
僕らが工房をあとにしたあとも、アンドリューさんの制作は続きます。
次に会うときには、あの日見たものがどう仕上がっているのか。
10月10日。
芽の巣山で再び見るのを、僕自身とても楽しみにしています。
humanity
-人間性的日常展-
〝アンドリュー ゲムリッチの山〟
巻ノ参
2026.10.10–11(土日)
11:00–17:00
場所|芽の巣山
MENOSYAMA WEB STORE
2026.10.18 sun
[SUNDAY 8PM]
PROFILE
石井和昭|Kazuaki Ishii
芽の巣山 店主。
美容師として人の手から造形される髪型に長く向き合ったのち、植物の世界へ。
多肉植物、サボテン、珍奇植物をはじめ、鉢、陶芸、工芸、土、石など、人のつくるものと自然のつくるもの、その交じりあった景色に惹かれる。
著書に『THE POT』。
東京・高円寺「芽の巣山」を拠点に、植物のセレクトや植え込み、作家との別注制作、「山の道具」の企画・制作を行う。
植物を売ることだけではなく、その植物が置かれる景色、その背景にある人やモノまで含めて伝えること。
「山を、編集する。」
をテーマに、植物と人の間にある景色をつくっている。
MENOSYAMA
Tokyo / Koenji
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YAMABIN|山便 001
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